「聞けなければ話せない」は大嘘

「聞けなければ話せない」は大嘘

 

  「 聞き取れない英語は話せない」という事を言う英語業者がいますが、 そんなことは絶対にないと断言します。なぜなら私自身かつて「聞けな いけど話せる」人だったからです。私は中学の頃から英語が好きで文法 などもしっかり勉強して、また発音についても教科書付属のテープを買っ てきて音読したり、発音記号もきちんと理解して単語を覚える時に発音 記号と一緒に覚えてきました。 教科書の内容をほぼ完璧にマスターしていました。そのかいあって英 語の成績は非常に良かったです。私が高校1年生位の頃でしょうか、あ る日ボーリング場の近くを友人数人と歩いている とアメリカ人と思われる女の子とそ の父親らしき人が近づいてきました。 「Hey, what' wrong?」何かを尋ねていることは状況でわかりま した。さもなければ近寄ってくることもなかったでしょう。それほど、 難しい質問でもないようでした。あれほど、テープを聴いて音読したり していて、通っていた学校の生徒の間では英語の第一人者?を自負して いた私です。 聞けないはずはありません(本当は教科書だけではリスニングは不十 分)。ところが現実は悲惨なものでまったく何を言っているのかわかり ませんでした。パニックになっている私を尻目にさほど英語が得意では なかった友人の一人が「あそこにあるよ」みたいなことを英語で返事し ていたのです。 その女の子はお礼を言ってそのボーリング場へ向かっていきました。 面目丸つぶれです。この件で私は「リスニングの才能がないのではない か」と自分を疑い始めて、それまで志望していた英文科を法学部に変えるというおちまでつきました。 それから数年して東京の大学へ通っていた時にアメリカ人の友人が出 来て、英語を話す機会に恵まれ (半年位でその友人はアメリカに帰りま した )練習もしていないのに、自分が思った以上に英語を話せることを 発見して自信を得、ますます英語を話すのが得意になったことは既に書 いたとおりです。 しかし、この時でもこちらの言いたいことはほぼ100パーセント表 現できるのに対して相手の言うことは半分くらいしかわからないという 状況だったので、やはり「リスニングは才能がないのでは」という思い を依然持っていました。それがそうではなかったという話はこれからお 話しますが、このように私のように「聞き取るのは苦手でも話すのは得 意」ということはありうるのです。 極端な話、話す練習ばかりしていて、聞く練習をまったくやらなけれ ば当然そうなるでしょう。逆に最近多いのがトーイックの勉強でリスニ ングばっかりやっていて、リスニングは得意だが話すとなるとさっぱり という人です。 私が話すのは得意だったのは間違いなく、発音記号の習得や音読と文 法、単語、読解の勉強をたくさんやっていたからで聞けなかったのは聞 く練習をやってなかったからです。 さらに、勉強仲間で完璧なカタカナ英語だがリスニングは得意という 人、あるいはその逆の人、これまでたくさん見てきたので、自信を持っ て聞き取る力と発音のよしあしはまったく関係がないと断言します。 さて、このように「 聞き取れなければ話せない」というのは誤りなの です。この耳慣れたフレーズはリスニングの教材を売るためのおためご かしでしかありません。「 聞き取れなくても話せる」状況はありえます。 両方できないというほうがはるかにたくさんあるでしょうけど(笑)。 「発音できないと聞けない」というのは「だからこの発音の講座(教材) を受講しなさい、そうすれば(日本人が苦手な)リスニングも出来るよ うになりますよ」という甘い罠なのです。だまされてはいけません。